管理栄養士・栄養カウンセラーのひびようこです。(@nourish.hibi)
40代から50代にかけて、多くの女性が物忘れや記憶力の低下に悩みます。これは更年期症状の一つで、女性ホルモン(特にエストロゲン)の減少が一因となっており、神経伝達物質の働きを鈍らせることにより脳の機能が低下するためです。
「仕事で集中力が持たない」「言葉や人の名前がすぐに出てこない」などの経験はありませんか? このような悩みは、適切な食事を心がけることで解決する可能性もあります。
脳の機能を支えるタンパク質や脂質、血糖値をコントロールする食べ方など、更年期の脳機能をサポートする食事法を5つご紹介します。
更年期と脳機能の関係性
更年期における脳の機能低下は認知症とは違います。
- 物忘れ
- 記憶力低下
- 集中力低下
- 思考力低下
- 注意力散漫
- ブレインフォグ(頭にもやがかかった感じ)
など
女性ホルモンの減少とともに脳が必要とする栄養素が不足し、神経伝達が影響を受けるために起こりやすい更年期症状です。
不眠やストレスなどの生活習慣も脳機能に影響を与えます。適切な食事と生活習慣の見直しが、更年期世代の脳機能を守るポイントです。
更年期に不足しやすい栄養素と脳機能の関係性
更年期には、脳に必要な栄養素が不足しがちです。不足する原因は、消化能力の低下や食事量の低下などが考えられます。低下する原因は、生活習慣の乱れ(睡眠不足、ストレス、運動不足など)が大きく関係しています。
タンパク質・ビタミンB群・亜鉛・鉄・ビタミンCなどの栄養素が不足すると、脳内ホルモンの分泌や血流に影響が出て、脳機能が低下していきます。
DHAやEPAなどの脂質も記憶力や認知機能を維持するのに重要ですが、脂質を受け付けなくなる方が増えるために脳の働きが鈍り、物忘れや集中力の低下といった症状が出やすくなります。
女性ホルモンの減少と物忘れ
40歳くらいから少しずつ女性ホルモンが減少していきます。特に、エストロゲンは神経伝達物質の増加・増強に力を貸すため、減少していくことで物忘れや思考力の低下を引き起こす可能性が高いといわれています。
女性ホルモンを維持するために必要な栄養素は、脳機能を保つために欠かせない栄養素と似ています。例えば、タンパク質・ビタミンB群・鉄・亜鉛などは、女性ホルモンの調整と脳の神経伝達を支える重要な役割を果たします。
閉経後もエストロゲンはゼロになるわけではありません。脂肪細胞などでもし少し産生されているからです。食事を見直すことで少しでも長く維持ができるため、結果として物忘れなどを予防し、脳機能を保つことにつながります。
生活習慣がもたらす脳への影響
更年期には、生活習慣の乱れが脳に大きな影響を与える可能性があります。不眠・ストレス・運動不足・飲酒・喫煙・スマホの使いすぎなどの要因が、脳への血流や栄養供給を妨げ、脳機能の低下を引き起こしやすいです。
例えば、不眠は疲労を蓄積し、集中力や記憶力に悪影響を与えます。また、ストレスは神経伝達物質のバランスを崩し、思考力の低下につながります。
生活習慣の改善には、栄養バランスの良い食事が不可欠です。生活習慣が整うと脳への栄養供給がスムーズに行われ、生活や仕事に支障が出るほどの物忘れや記憶力低下を予防できます。
脳機能の低下を予防する食事法5選
脳の働きにはタンパク質が欠かせず、脂質も重要な役割を果たします。さらに、血糖値をコントロールする食べ方や、朝食を抜かないことが脳機能の維持につながります。また、小麦類を控えた食事も効果的です。
これら5つの対策法で、更年期における脳機能の低下を防ぎましょう。
脳の働きに不可欠なタンパク質
更年期における脳機能低下を防ぐための最重要栄養素はタンパク質です。タンパク質は脳内ホルモンや神経伝達物質の材料となり、脳の働きを支えます。
特に、動物性タンパク質にはビタミンB群・鉄・亜鉛・マグネシウムなど、脳機能に必要なビタミンやミネラルが豊富に含まれています。
これらは、記憶力や集中力を維持するために必要な栄養素です。日々の食事に肉・魚・卵などの動物性タンパク質と、豆類などの植物性タンパク質を適度に取り入れるように心がけましょう。
敬遠されやすい脂質の重要性
40歳前後では脂っこい食事を避ける傾向が強まります。しかし、脂質は脳内ホルモンを作るために欠かせない栄養素です。
特にコレステロールは、脳機能の維持や女性ホルモンの産生に必要不可欠です。
低脂質な食事を続けると、脳機能の低下やホルモンバランスの乱れにつながる可能性があります。肉・魚・卵・ナッツ類・オリーブオイルなどから、適度な脂質を摂取することが大切です。
脂質を消化させるには、タンパク質をメインにした食事をすることで消化酵素を作ることが大切です。身体に悪いものと決めつけず、いろいろな食材を食べるように心がけましょう。
血糖値をコントロールする食べ方
食事量が減ってくる更年期女性はエネルギー不足に陥りやすいので、糖質(炭水化物)は重要な栄養素です。
しかし、糖質中心の食事や空腹時にお菓子や甘い飲み物を摂取すると、血糖値が急上昇してインスリンの分泌を増やします。大量のインスリンは血糖値を急激に下げる原因となり、集中力の低下を招きます。
血糖値をコントロールするために、食べる順番に気を付けましょう。加えて、ご飯や食物繊維の多いイモ類など、糖質の質にも気を配りましょう。
血糖値のコントロールができるようになると、脳機能を健やかに保てるようになります。
朝食を抜かない食生活
朝食を抜くと、一日のスタートからエネルギー不足に陥りがちです。特に、更年期には朝食の重要性が高まります。
エネルギー源となる食事をとらないことで、脳が必要とする栄養が不足し、集中力や記憶力の低下を招く可能性があります。
仕事中に集中できない、ミスが増える、人間関係に支障をきたすなど、日常生活にも大きな影響を与えます。
朝食でもタンパク質をメインとしたバランスの良い食事をすることを心がけましょう。脳に安定したエネルギーを与えることで、少しでも長く脳機能を維持できます。
小麦製品を控えるための献立の立て方
新型コロナウイルス感染者による後遺症として有名になった「ブレインフォグ」は、更年期に入った女性にも起こりやすい症状です。
long COVID の神経学的症状を表す特徴的なタームとして “brain fog” がある.簡単にいえば文字通り頭の中に霧がかかったような状態であり,具体的には頭がぼうっとして集中できない,人の話が入ってこない,言葉が出てこない,なかなか自発的な活動に移れないといったような症状を表す.
Long COVID に伴う brain fog と反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)を用いた治療的介入
原因は睡眠不足・ストレス・ホルモンバランスの変化などさまざまですが、小麦製品(グルテン)のとりすぎも原因として挙げられます。小麦製品はご飯やイモ類に比べて血糖値を上げやすく、結果として脳の働きに影響を与えやすいです。
主食はご飯やイモ類を中心にし、タンパク質を主菜・副菜に取り入れて栄養バランスを整えます。おやつにも工夫が必要です。
食べ過ぎだと感じる方は、まずは2週間だけ小麦を抜いてみてください。変化を感じたのであれば、麺類・パン・洋菓子を控える献立にシフトしていきましょう。
まとめ
更年期の脳機能低下は、食事による予防が効果的です。しかし、症状が重い場合はホルモン補充療法や漢方療法などの治療も視野に入れましょう。
「プレ更年期・更年期のための食習慣プログラム」は、これまでの食習慣を無理をせずに変化させていけるプログラムです。多くの卒業生が、日常生活を快適に過ごせるようになっています。
物忘れや記憶力低下にお困りの方は、ぜひトライしてみてください。