管理栄養士・栄養カウンセラーのひびようこです。(@nourish.hibi)
「プレ更年期・更年期のための食習慣プログラム」の参加者様の事例で「朝ごはんは食欲がなくて食べられない」というお悩みについてご紹介します。
朝食は昔からずっと食べていません。朝はなんとなく食欲がないのと、空腹を長くした方が身体に良いとも聞いたので。朝はコーヒーだけで済ませています。ただ、お昼ご飯の前にお腹がすいてしまうので仕事中にお菓子を少しつまみます。
プレ更年期・更年期のための食習慣プログラムの参加者さんの中でもよくあるお悩みです。同じように朝ごはんがあまり食べられない方はぜひ参考にしてみてください。
朝の食欲不振の原因
「昔からそうだったから」「食べると逆に調子が悪い」「食べなくても大丈夫!」という理由で、朝食をとらなくても良いものにしないでください。朝食は、更年期女性の体調を整えるキーポイントなのです。
朝の食欲がないのには原因がいろいろ考えられます。理由は1つだけでなく、いくつか重なっているかもしれません。
生理的な理由
- ホルモンバランスの変動:更年期に入るとホルモンバランスが変わり、女性ホルモンのエストロゲンが減少してくることが食欲に影響することがあります。
- 低血糖:夕食後から長時間食事をとらない睡眠中に血糖値が下がり、それが原因で朝食時に食欲がわかないことがあります。
- 消化器系の問題:胃腸の不調や消化不良が続いていると、食欲が落ちることがあります。
- 脱水症状:睡眠中に体内の水分が減少し、朝起きた時に脱水状態になっていると食欲不振を引き起こす場合があります。
心理的な理由
- ストレスや不安:精神的な負担が大きいと、自律神経のバランスが崩れ、食欲が減退します。
- 睡眠不足:質の良くない睡眠や睡眠時間の不足はホルモンバランスを崩し、食欲不振を引き起こすことがあります。
- うつ状態:うつ病などの心理的な問題も食欲に大きく影響します。
環境的な理由
- 生活リズムの乱れ:不規則な生活を送っていると、体内時計が狂い食欲が不安定になることがあります。
- 季節の変化:特に暑い時期は体が熱を持ちやすく、それが原因で食欲が落ちることがあります。
これらの理由が当てはまる方は、食欲がなくてもまず何か食べられるものはないか考えていきましょう。
朝食をとることの重要性
朝食は一日のスタートを切るために非常に重要です。朝食は脳と体にエネルギーを補給し、集中力や記憶力を高めたり、身体を働かせます。朝食を摂ることで血糖値が安定し、日中のエネルギーを確保することができます。
朝食を抜いた場合、昼食までの間にエネルギー切れを起こしてしまうため、それを補おうとお菓子やカフェインが欲しくなりやすいです。するとまた血糖値が乱高下するので、ホルモンバランスの乱れにもつながり不調が出やすくなってしまいます。
朝食を抜いた場合、次の食事(昼食)で血糖値が急上昇しやすいという研究結果もあり、厚生労働省からは朝食欠食率を低下させようという目標も設定されています。
厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、朝食を抜く習慣は健康に様々な悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。朝食を摂ることは、日中の血糖値の急激な変動を防ぎ、長期的な健康管理に重要であるとされています。特に、朝食を抜くことは、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中などのリスクを高めると考えられています。
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット
血糖値が急上昇して高血糖状態になると体脂肪が増加しやすく、ダイエットしたい方が朝食を抜くのは逆効果になってしまいます。
また、身体中で「糖化」という化学反応が起きます。過剰な糖(ブドウ糖・グルコース)が血管壁内のタンパク質と結合し、最終的に「AGEs(終末糖化産物)」を形成します。このAGEsが蓄積することで、血管の壁が硬くなり、弾力性が失われることが知られています。
AGEsができると、血管の内皮細胞に炎症を引き起こし、それが動脈硬化の一因となります。動脈硬化は血管が硬くなって狭くなる状態で、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが高まります。また、AGEsは血管の修復を妨げ、血管損傷の修復が遅れることもあります。
高血糖状態の持続は、このように血管をダメージさせ、さまざまな血管関連の健康問題を引き起こす可能性があります。適切な血糖コントロールが大切です。朝食を抜くことで、昼食の血糖値が急上昇することはできるだけ避けたいところです。
更年期女性におすすめの朝食メニュー
食欲がないとパンとヨーグルトなどの軽食メニューになりがちですが、できるだけご飯中心をおすすめします。小麦(グルテン)と乳製品(カゼイン)は知らずに不調の原因になりやすいからです。
朝食を食べない習慣の方の中には「ご飯が苦手」と感じている方もいらっしゃいます。ですが、糖質の中でもエネルギー源としてお米はおすすめなので、まずは極少量から試してみてください。お茶漬けにしたり、小さなおにぎりも良いでしょう。
朝食初心者さんには、卵料理が手軽でおすすめです。目玉焼き、ゆで卵、卵焼き、炒り卵、温泉卵、卵豆腐、とメニューのバリエーションもつけやすいです。
お味噌汁も朝の胃腸を温めるのでおすすめです。前の日の残りやインスタントの活用もOKです。「固形物を食べるのはちょっと・・・」と思う方は、まずは味噌汁からスタートしてみましょう。
どうしても何も食べたくない場合には、まずはフルーツを少量とってみるのも良いでしょう。ただ、朝食はフルーツで良いということではなく、あくまで応急処置です。朝食ではタンパク質のメニューと、適量の糖質をとる必要があります。
食欲をUPさせる工夫
食欲がないのに、「しっかりおかずを食べましょう」と言っても実行できないので、食べられるものを見つけていきましょう。
- レモン水、梅干し…酸味があり唾液の分泌を促す
- 佃煮・漬物…塩辛いものを最初に少量とることで、唾液の分泌を促す
- 口当たりの良いもの…卵豆腐や半熟卵、はんぺんなどなめらかなもの、スープや汁物
- 海苔・ふりかけ…ミネラル補給、ご飯が進む
- しらす・そぼろ・・・ご飯に載せて、タンパク質をプラスする
ポイントは、ご飯を中心にご飯のお供になるようなものを選ぶことです。パン食だとパンだけで済んでしまいますが、ご飯だと何かおかずが必要になるので、なるべくタンパク質を足していってください。
朝のルーティンを作ろう
おすすめの行動は
- まず水か白湯を少量飲む:一晩寝て脱水状態になっている体に水分を補給します。
- 起きたら速やかに朝食をとる:寝ている間に血糖値が下がってきているので、朝食を後回しにして家事などを進めるのではなく、起きたらなるべく早く朝食をとります。メニューは同じものでも良いですし、2つ3つパターンがあると飽きずに食べられます。
朝のルーティンを毎日繰り返し積み重ねていくことで、自分なりのペースができて朝食をとることが普通になっていきます。朝食を食べることを習慣化するということです。
まとめ
プレ更年期・更年期のための食習慣プログラムの参加者様では、今までずっとそうだった習慣を変えてみたら、「すごく調子が良い!」という感想もいただいています。徐々に体調にも変化が現れてきます。個人差はありますが、身体の状態を見ながら「いつ何をどのくらい食べるのか」を自分に合わせてカスタマイズしていくことをおすすめします。
長年朝食をとっていなかったので、はじめは食べるのに抵抗がありました。ですが、少しずつ食べるようになったら、午前中の身体が軽くなり、やたらとお菓子やコーヒーが欲しくなることが減りました。お昼を食べすぎて午後に強い眠気が出ることもなくなりました。
1日のはじまりに栄養をとることが大事だと実感しました。今では朝にも食欲があり、元気よく1日をスタートすることができます。
今回の事例では、中学の時から朝食を食べない習慣だった方が、朝食を食べられるようになり疲労感が減ったり、お菓子を食べる量を自然と減らすことができました。1日の始まりにしっかり食べられるかどうかでその日の体調も変わってきます。
まずは無理のないものから口にすることが大事ですが、何を食べるのかや量などは講座で詳しいことをお伝えしています。1人で食習慣を変えるのはなかなか大変なことなので、トライしてみたい方はぜひプレ更年期・更年期のための食習慣プログラムで一緒にやってみましょう!