長期間治らない逆流性食道炎の食事についての注意点とおすすめ食材

管理栄養士・栄養カウンセラーのひびようこです。(@nourish.hibi)

「プレ更年期・更年期のための食習慣プログラム」の参加者様の事例で、長期に渡る逆流性食道炎を持つ方の食事に関する悩みをご紹介します。

昔から逆流性食道炎があり、胃の不調を抱えている。食べると胸焼けが起こるので、食べることに消極的であった。肉や魚を避けがちで、食べられるものだけで食事を取っていたが、更年期の女性に特有の症状をいくつも抱えていた。胃酸分泌抑制薬は手放せない(市販薬)。

食習慣の改善を実践したところ、胃薬を飲む回数が減りました。同じ悩みを持つ女性は、相談時のアドバイスや変化を参考にしてみてください。

逆流性食道炎についての簡単な説明

逆流性食道炎にはさまざまな病態があります。胃の不調だと思っている方が多いですが、実際は胃と食道の間にある「下部食道括約筋」という筋肉の機能低下によるもので、食道に炎症が起こる病です。

胸焼けが起こることで自己診断をされている方が多いので、まずは胃の内視鏡検査(胃カメラ)をおすすめします。

さまざまな理由によって胃酸が食道内に逆流して生じる腹部症状や食道の粘膜がただれて傷ができる状態(逆流性食道炎)を胃食道逆流症(GERD)といいます。GERDに関連した症状は“胸やけ”以外にも胃酸の逆流が喉や口まで及び苦い感じがする呑酸(どんさん)や胸痛、むかつき感、慢性的な咳などとして経験することもあり、複数の症状が同時に生じることもあります。


一般社団法人 日本消化器内視鏡学会「胸やけ(逆流性食道炎)の原因は内視鏡でわかりますか?」より引用

逆流性食道炎は、食道に炎症が認められる「胃食道逆流症(GERD)」と炎症が認められない「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」に分かれます。

痩せ型で小食なのに胸焼けが起こりやすい方は、内視鏡検査で食道の炎症が認められないことが多く、半数近くが薬で症状を抑えられません。日々のストレスも多く、6〜7割はNERDと診断されます。

検査をしていない方の場合、市販薬で胃酸を抑える薬を飲んでいることが多いです。参加者様のように長きに渡って使用を続けていると栄養の消化吸収力を下げてしまうので、プレ更年期や更年期に入ると多くの不調が現れます。

胃酸が抑えられることで、さまざまな感染症にかかるリスクも高まります。自己流で薬を飲むことはできるだけ避けていただきたいです。

逆流性食道炎の食事・飲み物についての注意点

参加者様へのアドバイスとしては、

  • 胃酸抑制剤を長く飲むと、胃酸が出にくくなって消化吸収が弱くなる。
  • 薬を飲まずに食べた時はどうなるのかを観察する。
  • 不調が起こった時だけ服薬する。
  • 不調の出にくいタンパク質をいろいろ試してみる。
  • 血糖値の乱高下があると胃腸の働きが落ちるので、糖質過多の食事を控える。
  • 甘い食べ物や飲み物をやめる(※)。
  • カフェインをやめる(※)。
  • 酸味が強いものや刺激のある食べ物や飲み物をやめる(※)。

などをお伝えしました。お酒が好きな方であればアルコールを控えたり、喫煙をする方であれば禁煙をしたりといった注意点もあります。

※甘い食べ物や飲み物・カフェイン・酸味・刺激物は逆流の原因です。症状がない時は適量を口にして、特別な日の楽しみを見付けることも必要です。

逆流性食道炎が慢性化している方で気にしていただきたいのが、長期に渡る栄養不足です。

診断が出た後の服用期間は長くて8週間ですが、胃酸を抑える薬を飲んでいると、身体にとって大切なタンパク質を消化するのが難しくなってしまいます。

自己診断で薬を飲んでいる方はもっと注意が必要です。本当は胃酸の量が少ないのに、不調を緩和するためだけに胃酸を抑えていると栄養を吸収する力が衰えます。

空腹時や夜間の胸やけがひどい時は消化の良いもので耐えるしかありませんが、同時に食べられるタンパク質メニューは何かを少量から試していただきたいです。

肉・魚・卵には脂質が含まれるので敬遠されがちですが、たくさんのタンパク質とビタミン類・ミネラルなどが含まれています。これらは身体のさまざまな機能と密接に関係しているので、避け続けていると更年期障害のさまざまな不調に見舞われやすくなるのです。更年期に入る前から起こる方もいます。

長期間治らない逆流性食道炎のおすすめ食材とは

胃酸が逆流しないベストな食べ方には個人差があるので、「プレ更年期・更年期のための食習慣プログラム」では個別相談を設けてサポートをしております。

おすすめする食材や飲み物は、あくまでも一例です。症状が治まっている時に、食べられそうなものを少量から試していただくことをおすすめしています。

同じ肉や魚でも脂質の少ない部位を選べば食べられる方もいますし、一度に食べる量を減らしてこまめに摂取すると逆流しない方もいます。生活スタイルによっても個人差があるので、ご自身で探ってみてください。

逆流性食道炎でも食べられる食材

症状が出ている時には、脂っこいもの・酸っぱいもの・食物繊維の多い食材(野菜、精製されていない穀物など)は控えましょう。症状が出ていない時にチャレンジをしてみて、胃酸が逆流しないボーダーラインを見付けられると食べられる食材が増えます。

女性は1日に約50gのタンパク質(※)は摂取していただきたいので、動物性タンパク質を中心にご紹介します。

※タンパク質量50g≠タンパク質食材50g

脂質の少ない肉・魚

避けてきた肉や魚の中にも、意外と食べられるものがあることに驚く方もいます。肉は羊肉やジビエだと脂質が少ないものが多く、魚介類はタコやイカなども脂質が少ないです。大きい魚は、尾びれに近い部分の切り身を選ぶと脂質を減らせます。

ただし、更年期世代にとっては脂質も大切な栄養素の一つです。食べられないからと敬遠するのではなく、自分にとっての適正量を見付けましょう。調理方法を工夫するのも一つの手です。

植物性タンパク質なら、皮付きの豆類よりも加工された豆腐のような商品をおすすめします。野菜は食物繊維や糖質の少ないものを選びましょう。

逆流性食道炎でも飲める飲み物

基本的に水・白湯で過ごすようにしましょう。冷たい水だと胃の働きが低下するので、真夏の太陽の下でもない限りは控えることをおすすめします。

カフェイン以外にも、ジュースや炭酸類などの甘い飲み物は逆流の原因になるので避けましょう。

逆流性食道炎の原因が、食材ではなくて飲み物のせいであることも多いです。紹介した飲み物以外はできるだけ控えるといいでしょう。飲み物よりも身体を作る食事を大切にしてください。

逆流性食道炎と食道がんのリスク

逆流性食道炎で気を付けていただきたいのが、胃酸の逆流を繰り返すことで起こる「食道の炎症と修復」です。これはバレット食道と呼ばれており、内視鏡検査(胃カメラ)をすることで確認ができます。

バレット食道は治療法が見つかっておらず、進行が進むと食道がんになる可能性が極めて高いです。自己診断で胃酸を抑える薬を飲んでいると、このことに気付かずに悪化させてしまいます。薬は必ず医師・薬剤師のアドバイスを受けてから服用してください。

管理栄養士として心に留めておいてほしいのは、胃酸が食道へ逆流しないような“自分にとってのベストな食事方法”を見付けることです。万が一にもがんを発症しても、治療に耐えられる身体を作るのは栄養なので、毎日の食習慣を見直すことから始めましょう。

まとめ

食習慣を身につけた参加者様は、一歩ずつですが身体の変化が訪れています。

胃酸が上がってくる感じは時々あり、喉がイガイガすることはあるけれど、以前より回数は減った。

がっつりした肉や揚げ物は勇気が出なくてまだ食べられないが、卵や鶏肉は前より食べられるようになった。一度の食事で必要な量を食べられないから、補食を摂取するようにしている。

食べられるものが増えて栄養が満たされてくると、更年期の不調もゆっくりと軽くなっていきます。すぐに変化は訪れないので、焦らないことが大切です。

逆流性食道炎に似た他の病気もあるので、検査をしたことがない方は病院に行くといいでしょう。

  • 食道カンジダ症
  • 胃潰瘍
  • 十二指腸潰瘍
  • 食道アカラシア
  • 胃炎(ピロリ菌保菌者に多い)
  • 微小血管狭心症(更年期に多い)
  • 狭心症
  • 機能性ディスペプシア

病気によってアドバイスできる食事の注意点も変化します。

この記事を書いた人

ひびようこ

管理栄養士・分子栄養学 栄養カウンセラー

一生ものの食習慣を半年で身につける
プレ更年期・更年期のための食習慣プログラム主宰