お腹をこわしやすい更年期女性の原因と対策ポイント

管理栄養士・栄養カウンセラーのひびようこです。(@nourish.hibi)

「プレ更年期・更年期のための食習慣プログラム」の参加者様の事例で「よくお腹をこわしてしまいます」というお悩みについてご紹介します。

普段からお腹を壊しやすく、食べ物が原因かなと思って気を付けるのですがあまり効果がありません。出かける時に心配になったり、食べ物を避けたりするなど、いつも気がかりです。

プレ更年期・更年期のための食習慣プログラムの参加者さんの中でも人により、お悩みが深いものです。同じように下痢や腹痛などお腹の調子に悩まれている方はぜひ参考にしてみてください。

更年期のお腹の不調の主な原因

更年期になると多くの女性が様々な体調の変化に直面しますが、お腹の不調に悩むのはなぜでしょうか?考えられる主な原因を見てみましょう。

ホルモンバランスの変化

更年期に入ると、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減少します。エストロゲンは消化器系の活動を調節して安定させる役割も担っているため、エストロゲン減少は消化機能に影響を及ぼします。これが腹痛や下痢、便秘などの症状を引き起こす原因にもなります。

生活習慣・食習慣の影響

更年期には仕事や家庭のストレスが増加したり、運動不足や食生活の乱れなど、長年の習慣の影響が出てくることも考えられます。食べたものをうまく消化吸収できないなど身体の状態もあり、いろいろな要因が重なり、お腹の不調を引き起こすことが考えられます。

ストレスの影響

ストレスは自律神経を乱し、胃腸の働きを低下させます。特にストレスが長期間続くと、腸の動きが不規則になり、腹痛や下痢・便秘を引き起こしやすくなります。

食生活の見直しと7つのポイント

お腹をこわす原因として、食生活の影響がとても大きいです。ここでは、栄養学的に考えられる身体の状態や食べ物や飲み物について説明します。

①タンパク質の消化不良

身体に必要な栄養素として、一番にタンパク質(肉魚卵豆類)をおすすめしていますが、タンパク質を消化吸収するまでには様々な過程があり、大変なのです。唾液・胃酸・胆汁酸など胃腸から分泌される消化酵素もタンパク質を材料に作られます。もともとタンパク質の摂取が少なかった方は、急に増やすと消化が追いつかずにお腹の不調が出てしまうことがあります。

タンパク質の量の確保は大事ですが、急ではなくお腹の調子を見ながら徐々に増やしていきましょう。注意点として、プロテイン飲料は噛まずに直接お腹に入っていくことから、特に消化に負担がかかります。お腹の不調のある方はプロテイン飲料は休止しましょう。

②脂質の消化不良

脂質を気にするあまり、低脂質・低カロリーを心がけていると逆に脂質の消化力が低下してお腹をこわしやすくなることも考えられます。

脂質の消化を担っているのは胆汁酸。コレステロールを原料に肝臓で合成されます。肝臓の機能が低下していたり、材料となるコレステロールが足りない、胆のうの働きが低下しているなどで胆汁酸の分泌が低下すると、脂質の消化不良を起こしてしまいます。

胆汁酸を溜めておいて、必要に応じて分泌する役割のある胆のうでは、胆石症や胆のう炎などが起きることがあります。原因は様々ですが、高脂肪食を続けていることも原因の一つにあります。脂質はとりすぎと控えすぎ、両方に気をつける必要があるということです。

普段の食事で揚げ物や外食が多いと質の良くない油のとりすぎになるので気をつけましょう。食材の油(肉の脂身や魚・卵の脂質)については悪者ではないので適度にとることが大事です。「ささみや胸肉・赤身肉は低脂質で身体に良い」と、そればかり食べるのではなく、脂身を避け過ぎないようにしましょう。

③糖質のとりすぎ

お腹をこわしている時は、「消化の良いものを」と考え、お粥やうどん、軽食でパンなどを選ぶことが多くなりがちです。ですが、糖質だからといって消化が良いとも限りません。そして、糖質中心の食べ方をしていると血糖値の急上昇・急降下が起こります。すると自律神経ホルモンのバランスも乱れてしまうため、胃腸の働きが低下してしまいます。

お腹をこわしているときでも、糖質のみで食べずに、食べられそうなタンパク質(肉魚卵豆類)を少量で回数を分けて食べるようにしましょう。脂っこいものは最初は控えめにしておくのも良いでしょう。

④小麦・乳製品の影響

小麦のグルテン・乳製品のカゼインを控えることでお腹の調子が整うということがあります。グルテンやカゼインは消化に時間がかかります。特に、乳製品に含まれる乳糖の分解酵素が少ない乳糖不耐症の人の割合が、日本人で多いという調査結果もあります。

グルテンとカゼインは小腸粘膜のタイトジャンクション(細胞同士の結びつき)を弱くしてしまう「腸漏れ」とも呼ばれ、様々な影響があると言われています。中でもセリアック病や小麦アレルギー、過敏性腸症候群などでは下痢が起きやすいことが分かっています。

これらの病気でないとしても、グルテン・カゼインの影響でお腹をこわしやすくなっていることも考えられるので、一度、1週間~2週間程度抜いてみるのをおすすめします。再び食べた時にお腹の調子はどうなのかを観察してみてください。もしかすると、いつもよく食べている小麦製品や乳製品が原因かもしれません。

⑤カフェインの影響

カフェインを含む飲み物をとっていると、自律神経の交感神経優位の状態になり、胃腸の働きが低下してしまいます。それによりお腹の不調が出やすくなるのでカフェイン飲料を控えることをおすすめします。人によっては、カフェイン飲料と気づかずに飲んでいることもあります。確認しましょう。

⑥冷たいもの・辛いもの

冷たい飲み物を飲んだり、刺激になるくらい辛いものを食べた場合、胃腸への刺激が大きくお腹をこわすことがあります。お腹の不調がある時は控えるようにしましょう。

⑦食べる時間

朝食を抜いたり、コーヒーだけで済ませたりしていませんか?更年期女性では、お仕事の関係で昼食が遅くなってしまったり、軽食で済ませてしまうこともよくあります。3食の食事の時間は身体のリズムやホルモンバランスにも影響します。

起床から就寝、活動や仕事量などによってタイミングや食べた方が良いものには個人差があります。お腹をこわさないように対策していくには、食べる時間も重要なポイントです。

胃腸を健康に保つための習慣づくり

お腹の不調を防ぐために、いつもの習慣を見直すことが効果的です。食習慣と生活習慣、両方から見ていきましょう。

お腹を整えるための食習慣

「消化の良いもの」というイメージで、やわらかいものや糖質の食品ばかりを選ばないことが肝心です。お腹をこわしている時は、食べたものが消化吸収できずに出ていってしまっています。食べたものが栄養にならない、栄養が吸収できず使うことができない状態です。いかに栄養を入れていくか、考えていきましょう。

よく噛んでリラックスして食べることの重要性

急いでいたり、スマホを見ながら食べていると、あまり噛まずに飲み込んでしまっているのではないでしょうか。ご自身が一口に何回くらい噛んでいるか、観察してみてください。

食事をする時は一呼吸おいて、食べることに集中しましょう。そして、「おいしそう」「おいしい!」と感じながら食べることも胃腸の働きを良くしてくれます。噛むことで唾液が出て、連動して胃や腸は消化の準備をしていくので、まず30回噛むことを意識していきましょう。

水分摂取について

お腹をこわしやすい方は、冷たいもの・カフェイン飲料・甘い飲み物を控えましょう。

毎日十分な水分をとり、体内の水分バランスを保つことも重要です。水分不足は便秘を引き起こしやすく腸内環境を悪化させます。お腹をこわしやすい方は少しずつ、常温~温かい水を飲むようにしましょう。

腸活について

お腹をこわしていると、腸活に興味を持つかもしれません。一般的な腸活というと、食物繊維や発酵食品を多くとるものがほとんどです。しかし、下痢や便秘がひどい時には逆効果になることもあるので気をつけていきましょう。

食物繊維や発酵食品はお腹の調子を観察しながらとっていきましょう。多くとれば良いというものでもないので、お腹が張る、臭いガスがよく出るなどがある時は控えて様子を見ましょう。

お腹を整えるための生活習慣

規則正しい生活

規則的な食事時間を決めることと、十分な睡眠を確保しましょう。不規則な生活は腸内リズムを乱します。毎日同じくらいの時間帯に食事をとり、ゆっくりと入浴し、夜更かしせずに早めに布団に入るようにしましょう。

スマホやパソコン・TVなどを夜に見ているとブルーライトの影響で睡眠の質が落ちてしまう可能性があります。現代では必需品ではありますが、意識的に夜にかけて見る時間を減らしていけると良いですね。

リラックスする

ストレスを減らすためのリラクゼーション法を取り入れていきましょう。深呼吸や瞑想、動画を見て簡単なヨガをして身体をほぐすのが効果的です。趣味など好きなことをしたり、ぼーっと過ごす時間をつくるのもおすすめです。

考え方をゆるめることも大事で、「~しなければならない」ということが多かったり、人に気を使いすぎてしまうとどうしても緊張してしまいます。性格上、無理をしすぎてしまう人は、「無理していないかな?」とこまめに自分のことを気にかけてあげましょう。

お腹の症状が改善しない場合の対処法

お腹の不調が続く場合には医療機関を受診し、診断と治療が必要になることもあります。

日常の対策を行ってみても症状が改善しない場合、どうしたらよいのか不安を感じると思います。症状が改善しない背景には、病気や治療が必要な病状が隠れていることがあります。

医師の診察を受け、血液検査・内視鏡検査など、必要な検査を行うのもおすすめします。医師の指導の下、適切な治療法を見つけることが重要です。薬が必要なこともありますし、食事方法やストレス管理なども含まれます。一度診てもらうことで安心感を得ることもできるでしょう。

まとめ

更年期にお腹をこわしやすい原因と対策について詳しく解説しました。

プレ更年期・更年期のための食習慣プログラムの参加者様では、今までの習慣を変えてみたら、「すごく調子が良い!」という感想をたくさんいただいています。

取り組んでいくことで徐々に体調に変化が現れてきます。個人差はありますが、身体の状態を見ながら「いつ何をどのくらい食べるのか」を自分に合わせてカスタマイズしていくことをおすすめします。

よくお腹を壊すので、消化の良さそうなものを選んだり、お肉を控えたりしていました。ですが、自分なりにやっていたことは違っていたことを知り、取り組んでいくうちにお腹を壊すことが激減して、いつの間にかなくなっているのに気づきました。

食べるものに対しての考え方が変わり、より体調よく過ごすために何を食べたら良いのかがわかるようになりました。

下痢をしていると気持ち的にも心配があるので、解消されてスッキリしました!

今回の事例では、よくお腹を壊していたのが改善されたという変化がありました。特定の食品を控えたり、食べるのを恐れたりしないで、安心して食べることができること。そして栄養もしっかり消化吸収できる身体の状態にしておくことという意識が大切です。

下痢をしてしまったら、それ以前に食べていたものや体調を振り返り、また対策していくことを繰り返していきます。具体的な対策には個人差があるので、講座や個別相談の中でアドバイスしています。同じようにお悩みの方はぜひ、プレ更年期・更年期のための食習慣プログラムで取り組んでお悩みを解消していきましょう。

参考文献:乳糖不耐について 乳糖の特性と乳糖合成酵素 齊藤忠夫(2021年)

この記事を書いた人

ひびようこ

管理栄養士・分子栄養学 栄養カウンセラー

一生ものの食習慣を半年で身につける
プレ更年期・更年期のための食習慣プログラム主宰