更年期から気になってくるコレステロールを下げる食習慣

管理栄養士・栄養カウンセラーのひびようこ です。(@youkohibi)

更年期になると、女性ホルモンのエストロゲンが減少してくる影響でコレステロール値が上がってくる傾向があります。若い頃には気にならなかったのに、いつの間にか健康診断で引っかかるようになっていたという方も多いです。

「血液がドロドロになって血管が詰まる」という恐ろしいイメージが強いコレステロール。もちろん基準より大幅に高値であれば、動脈硬化などのリスクが高いため薬や食事制限が必要になってきます。

しかし、必要以上にコレステロールを気にしすぎて、自己流で食事を控えてしまうと逆に不調を引き起こす可能性もあるので、食事のポイントをおさえていきましょう。

なぜ更年期にコレステロールが上がってくるの?

コレステロール値が上がってくるのには様々な要因があり、他の病気が原因で高値になることもあります。(例えば腎臓病、肝臓の異常、糖尿病、自己免疫疾患など)
病気の発見につながることもあるので、まずはやはり受診をおすすめします。

その他、更年期女性において、栄養からの視点でコレステロール値を見てみるとこのようなことが考えられます。

女性ホルモンとの関係

女性ホルモンのエストロゲンには血液中のコレステロールを抑える働きがあります。更年期のエストロゲン減少と脂質異常症には密接な関係があることが研究でわかってきているそうです。

甲状腺機能との関係

甲状腺機能低下症でもコレステロール値が高くなることがあります。
長年の生活習慣で、空腹時間が長すぎたり、食事をスキップしてしまう、必要な栄養が摂れていない、ストレス過多などでホルモンバランスの乱れから甲状腺機能の異常が起き、コレステロール値にも影響が出る場合もあります。

遺伝的に家族性でコレステロールが高

若い時からコレステロールが高値の場合は遺伝的要因も考えられます。人口の300人に1人程度と言われています。血液中のコレステロールを肝臓で処理できない、または処理能力が低く、血中濃度が上がります。動脈硬化リスクが高くなるため、家族に高コレステロールや動脈硬化などの既往歴がある場合は気をつけていく必要があります。

習慣からの影響

高カロリー・高脂質な食事が続いていたり、肥満があると、やはり高コレステロールになりやすいです。アルコールや喫煙・運動不足なども影響します。

コレステロールは悪者ではない

コレステロール=悪者というレッテルが貼られていますが、コレステロールは身体にとって必要不可欠な栄養素です。コレステロールの役割や働きについて、誤解を解いていきましょう。

コレステロールには大事な役割がある

これら全て、欠かすことのできない役割です。細胞膜が弱くなったら細胞が脆くなり、全身に影響します。脳の神経伝達がうまくいかなくなったら、脂質の消化ができなかったら、ホルモンが作れなかったら、ビタミンDが不足したら…と考えると、コレステロールはなんて大事なのかと思います。多すぎるのも問題ではありますが、足りないことのリスクも高いのがコレステロールなのです。

コレステロールの働き

LDLは肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ役割で【悪玉】と呼ばれています。HDLは【善玉】と呼ばれ、血管中に溜まったコレステロールを回収して肝臓に戻す役割です。
コレステロールには全身で必要な材料となるので、運ぶこと自体は悪くはないのです。

ではなぜ悪者にされているのかというと、LDLコレステロールはとても酸化しやすく、酸化LDLコレステロールになってしまうからです。(超悪玉コレステロールとも呼ばれます)血管を傷つけ、血管壁に留まりプラークを作って血管を狭めてしまいます。LDLが酸化LDLにならないように対策をしていくことが必要です。

実は身体の中で作られているコレステロール

コレステロールは身体の中で毎日一定量必要なため、身体の中で作ることができ全体量の8割を占めています。食事からのコレステロールは2割と意外にも少ないのです。

2015年に食事からのコレステロール摂取量の上限目標量の設定がなくなりました。いくら食べても良いということではありませんが、これ以上摂ると健康を害するという量を決めるだけの科学的根拠が少ないということで設定されていません。

脂質異常症の中でも高値で注意が必要な方については、2020年に「1日200㎎未満に留めることが望ましい」とされました。コレステロールを含む食品を食べてはいけないのではなく、毎日多くとることは避けた方が良いということです。

コレステロールはタンパク質の食品に含まれているため、コレステロール摂取を制限するとタンパク質不足になってしまうため、控えすぎないよう注意が必要です。

コレステロールについて食事で気をつけたいポイント

栄養相談をしていると「卵は1日1個まで?」「コレステロール0の商品の方が良いですよね?」という質問を多くいただきます。コレステロール値には個人差もあるので一概には言えませんが、医師からの指導や、担当の管理栄養士さんのお話をベースとして考えてください。具体的な食事方法の指示がない場合や、「バランスの良い食事を」ということであれば参考にしてみてください。

油の質に気をつける

酸化した油、特に外食や総菜の揚げ物に注意しましょう。家庭では揚げ油の使いまわしをしないようにします。サラダ油やマーガリンは控え、使う油を変えてみましょう。家庭での作り置きをする場合は油を控えたメニューにするのがおすすめです。

抗酸化対策としてビタミンA・C・Eを多くとる

ビタミンACEはビタミンエースとも呼ばれ、抗酸化作用を持つビタミンです。コレステロールは脂質なので、脂溶性ビタミンで抗酸化作用のあるビタミンA・Eがおすすめなのと、ビタミンCは水溶性でもビタミンEをリサイクルしてくれるので一緒にとるようにすると効果的です。色の濃い野菜、アボカド、アーモンドなどに多く含まれています。野菜を多くとるようにしましょう。

食物繊維を多くとる

野菜にはビタミンや抗酸化作用のあるポリフェノールを含むものが多いのですし、きのこ・海藻・芋類・雑穀・豆類も食物繊維とビタミン・ミネラルを含みます。食物繊維にはコレステロールの排泄を促す作用もあるので積極的にとっていきましょう。

タンパク質(肉・魚・卵・豆製品)は必要量とる

肉や卵にはコレステロールや脂が多いイメージがあるかもしれませんが、大事なタンパク質源です。なるべく減らす努力や、肉の脂身を控えるために鶏ささみや胸肉ばかりを食べる必要はありません。いろいろなお肉をまんべんなく食べるようにしましょう。(※コレステロールが非常に高値の場合は医師の指示で低脂質の肉をおすすめすることもあります)

魚には良質な油で、血液をサラサラにすると言われるEPA・DHAが含まれているので食べる頻度を増やしてタンパク質を確保しましょう。

成人女性では1日のタンパク質量50gを目安で、3食に分けて食べることを目標にします。タンパク質は身体の材料として最も大事なので、コレステロールが高いからと減らし過ぎないようにしましょう。

1日50g→1食に17gを目安にとります。組み合わせるのがポイントです。

やみくもに低脂質にしすぎない

肉の脂身を控えることもそうですが、低脂肪や脂質0、コレステロール0という商品を選んだり、油を悪として制限しすぎることもおすすめしていません。肉の脂身や卵に含まれる油の中には脂溶性のビタミンが含まれていて、それらにも重要な働きがあるからです。

脂質0、コレステロール0などの商品の裏表示を見てみると、加工するための添加物や味の調整に人工甘味料などが使われていることも多くあります。「コレステロール0だから安心」とも言い切れないので、買い物の時には表示をよく見て選択しましょう。

糖質過多に気をつける

糖質(ごはん・パン・めん・お菓子・果物・ジュースなど)が多いと、中性脂肪が増える、血糖値の乱高下、タンパク質摂取が減る、ビタミン・ミネラルの喪失が多くなる、などの影響があります。脂肪やコレステロールだけ気をつければよいわけではなく、糖質の摂りすぎにも気をつけていきます。

まとめ

コレステロール値が気になってきたら、まずは病院を受診して相談しましょう。その上でコレステロール自体を悪いものと考えるのではなく、コレステロールの大事な役割を知っておいてください。私たちの身体を維持するために必要な材料です。
コレステロールを恐れすぎないことと、むやみに食べる量を減らさないようにしていきましょう。食事だけでなく、飲酒・喫煙、運動不足やストレスも影響しているので生活習慣として取り組んでいけると、この先に起こりうる不調や病気を予防し、元気に過ごしていくことができます。ぜひ一緒に取り組んでいきましょう。

参照:日本人の食事摂取基準2015年版、2020年版(厚生労働省)

この記事を書いた人

ひびようこ

管理栄養士・分子栄養学 栄養カウンセラー

一生ものの食習慣を半年で身につける
プレ更年期・更年期のための食習慣プログラム主宰