プレ更年期・更年期に要注意! 女性がなりやすい生活習慣病と食事による予防法

管理栄養士・栄養カウンセラーのひびようこです。(@nourish.hibi)

プレ更年期(35歳くらい)・更年期の女性に注意していただきたいのが生活習慣病です。更年期症状や更年期障害に目を向けがちですが、閉経前から高血圧や糖尿病といった病気のリスクが高まります。

生活習慣病のリスクに対してはさまざまなアプローチがありますが、そのなかで大きな割合を占めているのは食事です。プレ更年期・更年期の女性がなりやすい生活習慣病と、これらを予防するための食事についてお伝えします。

更年期女性に多い生活習慣病のリスクと注意点

更年期の女性に多い生活習慣病は、これまでの生活習慣やホルモンバランスの変化が関係しています。

健康診断等で異常値は出ていませんか? 数値は正常範囲でも不調はありませんか? 異常値がある方はもちろんのこと、正常範囲内でも不調があるなら改善の必要があります。

更年期女性に多い生活習慣病とは

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 肝機能障害
  • 歯周病
  • メタボリックシンドローム
  • 骨粗しょう症
  • 心血管疾患
  • うつ病
  • 不眠症

など

これらは更年期の女性に多い生活習慣病で、高齢になるほど死因につながる「がん」「心臓病」「脳卒中」の発症が高まります。40代の後半から50代の前半で命に関わる疾患を発症してしまう方もいるため、早めの予防と管理が必要です。

病気になると長く薬を飲んだり食事制限が必要になったりして、改善に時間がかかってしまいます。要注意の数値があるなら、今日から生活習慣をあらためるといいでしょう。

更年期症状と生活習慣病の関係性

更年期症状には約100種類もの症状があり、重くて日常生活に支障を来たすと「更年期障害」といわれます。更年期に特有の症状は、生活習慣病と密接な関係を持っています。

例えば、ホットフラッシュや情緒不安定な状態が続くと睡眠の質を下げるため、結果的にストレスの増加や不規則な生活習慣を引き起こします。この状況が長期に渡ると、高血圧や心疾患などのリスクが高まるのです。

複数の更年期症状に悩まされると食生活が乱れたり運動が面倒に感じたりして、糖尿病や脂質異常症の原因になることもあります。

慶應義塾大学医学部内科教授・伊藤裕氏が提唱する「メタボリックドミノ」には、生活習慣病が次々と他の病気を招く可能性が示されています。

過食,運動不足等の生活習慣の揺らぎが肥満,インスリン抵抗性を引き起こし,これらが共通の原因となり,血圧上昇,耐糖能異常,脂質異常が生じる.この病態の重積が「メタボリックシンドローム」であるが,全体の流れからみると,上流に位置する.未だ糖尿病は発症していないが,動脈硬化症は進展していく.インスリン分泌不全より,糖尿病が発症するのはドミノの中流であり,腎機能障害,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)が起こってる.CKDは腎不全のみならず,脳血管障害のリスクとなり,この関係は心腎連関と呼ばれている.すなわち,メタボリックドミノは,臓器連関及び病態進展の時間経過を含む概念である.

メタボリックドミノと先制医療

度重なる更年期症状によって生活習慣が乱れると、メタボリックシンドロームを引き起こしてドミノ倒しのように重い疾患へとつながるリスクが高まることは、頭の片隅に入れておくといいでしょう。

女性ホルモンの減少と生活習慣病

閉経に向けて減少していく女性ホルモンは、45歳くらいまでの女性の健康を維持する重要な役割を果たしています。特にエストロゲンは、さまざまな病気から守る役割を持っています。

エストロゲンが減り始めると、心血管系の健康への影響が大きく出始めます。

食後、運動後、入浴後、寒さ、寒暖差でも血圧は高くなる

50歳くらいまでは血圧に異常がなかった方でも、閉経を迎えると徐々に血圧が高くなることが多いです。もともと高めだった方は、心臓病や脳卒中などのリスクが一気に上がります。

血糖値の調節機能が低下することも大きな問題です。エストロゲンは血糖値を下げる唯一のホルモン「インスリン」の働きを助ける役割があります。閉経後に太りやすくなるのは、インスリンの出方や働きが低下して血糖値をうまく調節できなくなることも影響しています。

血糖値のコントロールが効かなくなると、糖尿病や脂質異常症のリスクが高くなります。

女性ホルモンの低下は骨密度の低下にもつながります。

エストロゲンがうまく分泌されている状態では骨を作ったり壊したりを繰り返せますが、エストロゲンが減り始めるとこのバランスが悪くなります。50歳前後から徐々に骨密度が低下し、高齢期には骨粗しょう症のリスクが高まります。

生活習慣病をコントロールする食事

毎日の食生活を見直すことで生活習慣病の予防ができます。すでに発症してしまった場合でも、今から食事を改善すればコントロールしやすくなります。

食事による影響は長期スパンなので、焦らずゆっくりと向き合ってみましょう。

生活習慣病を悪化させる食べ方

更年期の女性に特に多いのが、忙しさゆえに偏ってしまう糖質中心の食事です。

この他にも、不足しがちな野菜や飲酒などが問題として挙げられます。

厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」より引用

飲酒に関しては、2024年2月19日に初めて厚生労働省から「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」が発表されました。女性は生活習慣病のリスクが少量で上がるので注意が必要です。

また、健康のためと思って低カロリーを意識し過ぎて必要な栄養素が得られずに、生活習慣病を悪化させてしまうこともあります。痩せようと思ったのに、逆に代謝機能が落ちてしまい、あまり食べていないのに体脂肪が増えていくという可能性もあります。

健康診断・人間ドックでの血液検査データを安定させる食事

食事改善による健康状態の改善速度には個人差があります。数週間から数カ月で変化が出てくるので、じっくりと食事を整えていきましょう。

心疾患のリスクが高めの方は、タンパク質の中でも良質な脂質(オメガ3脂肪酸)を含む魚を意識して食べる必要があります。サーモンやマグロなど、最初は食べられそうな食材から始めるといいでしょう。

血糖値やコレステロール値や肝臓の数値が高めの方は、主食に全粒穀物を混ぜてみたり野菜や海藻などの食物繊維を積極的に取り入れることをおすすめします。緑黄色野菜などから抗酸化物質をとることも大切です。

若い頃から貧血気味の方は、赤身の肉やレバーや赤身の魚(カツオ、ブリ、アジ、サバ、イワシなど)を増やすようにしましょう。

女性ホルモンを増やす食事のポイント

減りゆく女性ホルモンを維持するために必要な栄養素には「エクオール」と「コレステロール」があります。

エクオール

大豆製品に含まれるイソフラボンが体内で変換されるとエクオールに変化します。

女性ホルモンと似た働きをするとして更年期世代にはとても有名な栄養素ですが、残念ながらイソフラボンからエクオールに変換できる人は2人に1人といわれています。

エクオールは妊娠・授乳中だと控えるべき栄養素に含まれているので、サプリメントで摂取するのは控える必要があります。ただし、大豆製品は良質な植物性タンパク質なので、食品として口にするなら食べ過ぎではない限り問題は起こりにくいです。

コレステロール

女性ホルモンを作るのにコレステロールが大切であることは、一般的にはあまり知られていません。動脈硬化のリスクが高まるほど高い数値でなければ、更年期世代においては低いほうが大問題です。

悪者にされがちなコレステロールですが、女性ホルモンを作るための重要な役割を持っています。

加齢とともに肉や卵を食べられなくなる方が増えますし、身体に悪いからといって控えている方もいますが、適量で食べるように心がけましょう。

コレステロールを含む食材をむやみに減らしてしまうと、女性ホルモン以外にも材料として不足してしまうため、身体への悪影響が出てきてしまいます。

まとめ

更年期の生活習慣病予防には、食事が重要な役割を果たしています。食事の改善は最も手軽で効果的な対策の一つです。始めるのに遅すぎることはありません。

「プレ更年期・更年期のための食習慣プログラム」では、自力では食事の改善が難しいと思われている方をサポートしています。生活習慣病に移行してしまう前に、仲間と一緒に食習慣を身に着けておくのも一つの手です。

この記事を書いた人

ひびようこ

管理栄養士・分子栄養学 栄養カウンセラー

一生ものの食習慣を半年で身につける
プレ更年期・更年期のための食習慣プログラム主宰